2012年11月21日から12月9日まで、東京・阿佐ヶ谷のアート・アニメーションのちいさな学校劇場で「久里洋二の全仕事」と題されたアニメーション作家久里洋二氏の大規模な回顧上映が行われる。
久里洋二氏はノーマン・マクラレン氏をはじめとした海外の個人作家の実践に影響を受けアニメーション制作を始め、1960年に真鍋博氏、柳原洋平氏とともに結成した「アニメーション3人の会」の活動で、日本のインディペンデント・アニメーションの礎を築いた。「アニメーション3人の会」は1960年代において前衛芸術のメッカであった草月会館での自作上映活動(後に「アニメーション・フェスティバル」と改称し、国内からの作品の公募および優れた海外作品の紹介を行った)によって、従来アニメーションとは無縁だった人々にも制作の道を示した。
久里氏らの動きは、世界的な動向ともマッチした。1960年はアヌシー国際アニメーション映画祭の第一回が開催され、国際アニメーション協会(ASIFA)結成に向けての動きが具体化した年であり、1960年代には、それまでの動画表現の代名詞であった「カートゥーン」「漫画映画」よりも広範な表現を包括的に指す「アニメーション」という言葉が積極的に前に押し出されることで、動画表現の多様性が花開いた時代でもある。久里氏は、そういった流れのなか、シンプルで効果的な動きを突き詰めたアニメーション、故・武満徹氏らの前衛音楽の使用、男女間の関係性や社会的状況を扱う諷刺性やナンセンスギャグを併せもつそのオリジナリティ溢れる作品によって世界的に高く評価された。
また、1960年代中盤からは日本テレビの深夜番組「11PM」のために毎週新作のアニメーションを発表し、一般的にも幅広く受け入れられた。
久里作品は近年再び世界的に脚光を浴びている。2011年には旭日小綬章を受章、同年、ポーランド・クラクフのアニメーター映画祭で回顧上映が開催された。2012年6月にはザグレブ国際アニメーション映画祭で功労賞を受賞、3プログラムにわたる回顧上映プログラムには久里氏自身も立ち会い喝采を浴びた。8月の広島国際アニメーションフェスティバルでは「11PM特集」が、全4プログラム約6時間にわたって一挙に上映された。また、twitterへの投稿をまとめた著作『ぼくのつぶやき自伝 @yojikuri』も2012年2月に新潮社より出版されている。
今回の回顧上映では、1960年から2008年までに作られた作品のなかから34本が3プログラムに分けて上映されるほか、「11PM」の一挙上映や2008年のドキュメンタリー映画『久里洋二でいこう!』(才谷遼監督)も含め、計8プログラムの上映が予定されている。
「久里洋二の全仕事」公式ホームページ
http://www.laputa-jp.com/school/kuri_screening.html