ゲームと他のエンタテインメントの大きな違いは、ユーザーインターフェース(UI)という概念の有無だ。ゲームの特徴はインタラクティブ性にあり、プレーヤーとゲーム世界はUIを介して相互作用する。
しかし、UIに関する考察や知見の共有は、ゲームデザインやプログラミングなどと比べて、あまり重要視されてこなかった。こうした中で本書『ゲームインターフェイスデザイン』の日本語版が出版されたことは、大きな意味がある。
本書は2006年に初版が出版された書籍の改訂版だ。この数年間でタッチスクリーンやモーションデバイスを用いたゲームが普及し、ユーザーエクスペリエンス(UX)という概念が一般化した。本書では古典的なゲームに加えて、これらのデバイスを用いたUIについても、現場ですぐに役立つ、様々な知見が盛り込まれている。その上で、さらなる一歩を踏み出している。
ゲームはルールの集合体で、ゲームデザインとはルールを適切に組み合わせて、楽しさを生み出すエンジンの設計だ。一方UIデザインとはプレーヤーに寄り添い、ゲーム世界から放出された楽しさを受け止め、再び送り返す窓の設計。これらはUXの両輪となる。
そのためUIデザインに関する論考は、UI自体の体系化に留まらず、ゲームデザインへの影響を含まざるを得ない。しかも、画面を触ってプレーするタッチスクリーンや、全身でプレーするモーションデバイスの普及は、UIデザインとゲームデザインの垣根を、一気に突き崩してしまった。ここが、この数年間で起きた変化のポイントだ。
つまり求められているのは、ゲームデザイン側ではなく、UIデザインの視点からUXを捉え直し、論じていくことだ。本書は初版の時点から、この挑戦に果敢に挑んできた希有な書籍となっている。技術革新が激しい分野だけに、まだ混乱気味な点は残っているが、こうした言語化の積み重ねに対して、改めて敬意を表したい。
『ゲームインターフェイスデザイン』
著:ケヴィン・D・サンダース、ジーニー・ノバック、出版社:ボーンデジタル
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