立命館大学ゲーム研究センターとITコンソーシアム京都は2013年1月18日、京都・嵐山の百人一首博物館「時雨殿」で、「ゲーム保存国際カンファレンス:ビデオゲーム〜保存?忘却?世界はどう考えているか〜」を開催した。シンポジウムではゲームや周辺文化の保存を巡る社会的意義について、日米英の取り組みが紹介された。
プレゼンターは米スタンフォード大学のヘンリー・ローウッド氏、英バーススパ大のジェームス・ニューマン氏、立命館大学の細井浩一氏。ローウッド氏は同大学における、カセットテープ時代からオンラインゲームまで、約15年間のゲーム保存活動について俯瞰。周辺グッズやマニュアルなどの保管も触れ、課題が山積みであることを示した。
一方ニューマン氏はゲーム&ウォッチの「パラシュート」が自身のゲーム原体験だと切り出し、文化的側面からみたゲーム保存の重要性について指摘。こうした捉え方が、英国国立ビデオゲームアーカイブの設立や、同アーカイブがある国立メディア博物館のビデオゲーム展示に繋がっていることを紹介した。
細井氏はゲームのデジタルアーカイブについて、物理的収集・エミュレータ収集・映像とプレイデータ収集に分類し、各々における対象選定の重要性について語った。また立命館大学が2012年4月から進める「平成24年度メディア芸術デジタルアーカイブ事業」を紹介し、メディア芸術4分野の統合的なアーカイブ構築について、意義を強調した。
パネルディスカッションでは立命館大学の中村彰憲氏のモデレートで、デジタルゲーム保存の展望ついて議論が行われた。様々な議論が行われたが、総じてデジタルゲーム保存の歴史は浅く、各国が協力して基礎構築を進める必要がある点で合意した。
最後に、立命館大学ゲーム研究センター所長で、任天堂顧問も務める上村雅之氏が「ゲームの保存は人類の遊び文化を忠実に保存する」行為に他ならないと指摘し、会を締めくくった。また中村氏は終了後、本カンファレンスが時雨殿という「かるた遊び」の博物館で開催された点について補足し、日米英による協調関係の進展に期待を寄せた。