イギリスの大英図書館(British Library)では、2014年5月2日から8月19日にかけて、「明かされるマンガの素顔:イギリスにおけるアートとアナーキー(Comics Unmasked: Art and Anarchy in the UK)」展が開催されている。

キュレーターのひとりとして、世界的に著名なイギリスのマンガ研究者・ジャーナリストであるポール・グラヴェット氏が名を連ね、しかもイギリス史上最大規模の展覧会と謳われているだけあって、かなりの評判を呼んでいるようだ。

イギリスとマンガ、と聞いてすぐに思い浮かぶのは、1980年代中頃から後半にかけてアメリカのスーパーヒーロー・コミックスを再解釈し、新たな時代を築きあげていったアラン・ムーア、ニールゲイマンといった一連のイギリス人作家たちだろう。その一方で、イギリス本国のマンガについては、まだそれほどよく知られているとは言いがたい。

とはいえ、いくつかの固有名についてはこれまでもしばしば言及されてきた。キャラクター・マンガの元祖としての「アリー・スローパー」(1884年)や、先駆的な諷刺雑誌としての「パンチ」(1841年)、1938年に創刊され2012年まで刊行され世界で最も長く続いたマンガ雑誌のひとつである「ダンディ」、あるいは1960年代のコミックス(Comix)が掲載されていたアンダーグラウンド雑誌の「Oz」、そして1977年に創刊され前述のアラン・ムーアやニールゲイマンといった才能を輩出したマンガ雑誌「2000AD」など、イギリスのマンガ史において世界的に有名なものはいくつか存在する。

しかしながら今回の展示では、「アリー・スローパー」よりも古いマンガの起源として近年よくとりあげられる『Northern Looking Glass』(1826年、メディア芸術カレントコンテンツ内関連記事)や、これらの有名な固有名を、単純に時系列に沿ってつなげていくのではなく、社会問題、性といったテーマを設定した上で、アンダーグラウンドな作品も含めた様々な作品がそれぞれのテーマのもとで集められている。しばしば子ども向けのレッテルを貼られてきたマンガが、こういった大人の問題(テーマ)を扱ってきた側面を強調し、いわばそのレッテル(マスク)の下に隠された「イギリス・マンガの素顔」を垣間見せる展示だと言えるだろう。

講演会も多数企画されているので、ホームページのイベント・ページを確認してほしい。

また、iPad専用アプリではあるが、今回の展示内容を紹介するデータが無料でダウンロードできるようになっている。

なお、本展示会場であるイギリスの国立図書館にあたる大英国書館には、多くのマンガが含まれていることが知られており、これらの貴重な資料については、簡単な解説とともにそのリストがホームページ上に掲載されている。

「明かされるマンガの素顔:イギリスにおけるアートとアナーキー」展

http://www.bl.uk/whatson/exhibitions/comics-unmasked/index.html

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ポール・グラヴェットによる紹介(blog)

http://www.paulgravett.com/index.php/articles/article/comics_unmasked1