中山隼雄科学技術文化財団と科学技術融合振興財団という、ゲームに関する調査研究・助成事業などを行う二つの公益財団法人で、それぞれ平成26年度の研究助成などに関する応募募集が始まった。ともにシリアスゲームやウェアラブルデバイスなど、従来のゲームの領域にとらわれない新しい領域を対象に盛り込んでいる点が特徴で、応募締め切りはどちらも2014年10月15日となっている。
中山隼雄科学技術文化財団はセガの元社長として知られる中山隼雄氏が、「人間と遊び」の観点にもとづく調査・研究・開発などを目的として、私財196億円を投じて1992年に設立した。科学技術融合振興財団はシミュレーション&ゲーミングの研究と社会啓発などを目的として1994年に設立され、理事長をコーエーテクモホールディングス代表取締役社長の襟川洋一氏、専務理事を同会長の襟川恵子氏がつとめている。
中山隼雄科学技術文化財団では、調査研究と助成研究で総額4780万円が計上されている。このうち調査研究では2014年5月に実施された「夢のゲーム」アイディア募集に伴い、GPS付きノートに感謝のメッセージを記して国内を巡回させる「ありがとうのキセキ」と、高齢者に「オレオレ詐欺」を疑似体験させる「振り込め詐欺をゲームで対策」が研究課題として上げられている。応募者はこれらをベースに独創的なアイディアを付け加え、1000万円の研究費でプロトタイプの開発を行うことが求められる。
助成研究では「ゲームを越えたゲーム」など3分野が設定されており、1件当たり500万円または100万円以内の助成額が設定されている。財団ではシリアスゲームやゲーミフィケーションの定着、ウェアラブルデバイスなどの低価格化と普及、ゲームの開発技術の変化などで「ゲームを越えたゲーム」が登場しつつあるとして、こうした時代に向けた研究助成を行うとしている。なお助成を受けた者は研究報告書等の提出に加えて、毎秋に開催される研究成果発表会での成果発表が義務づけられる。
一方で科学技術融合振興財団では、調査研究と補助金で総額1500万円が助成される。調査研究では「シミュレーション&ゲーミングに関する調査研究」と、「シミュレーション&ゲーミングによる学習用ソフトウェアの試作」「社会に役立つシリアスゲームの調査研究」に分かれており、総額1200万円が計上されている。
また補助金助成では「シミュレーション&ゲーミングの先進的独創的な手法の研究」が設定されており、総額300万円となっている。補助金事業では対象を大学院生や助手などの若手研究者としており、研究者の裾野を拡げる狙いが含まれている点も特徴だ。調査研究・補助金の双方で、特に成果発表会などは予定されていないが、研究終了時に研究報告書と会計報告書を提出する必要がある。
欧米に比べて日本ではゲーム研究の社会的・学問的認知が乏しく、産学連携も一般的でないことから、研究予算の獲得が難しく、これが研究成果の蓄積や社会的活用が進まない遠因にもなっている。こうした中で両財団の研究助成はゲーム研究者にとって数少ない研究機会の提供を果たしてきた。本年度も意欲ある独創的な応募が多数集まることが期待される。
中山隼雄科学技術文化財団
http://www.nakayama-zaidan.or.jp/
科学技術融合振興財団
http://www.fost.or.jp/