オーストリア大使館商務部は2014年11月17日、都内でゲーム会社の来日記者会見を開催した。会場ではオーストリア経済振興会社のカール・ゲンザー氏がオーストリアで起業するメリットについて説明。ゲーム会社のスプロイングとミプミゲーム、オンライン決済用プリペイドカードを発行するペイセイフカードが登壇した。

オーストリアは国土面積が日本と同程度で、人口840万人の小国だが、一人あたりGDPが36,980ユーロ(約536万円)と日本よりも大きく(約370万円)、政治や経済も安定している。欧州大陸の中央部にあるため東西ヨーロッパをつなぐ要衝として栄え、近年では東欧諸国から優秀なゲーム開発者も多数流入している。

毎年9月に開催されるゲームイベント「GAMECITY」では約7万人の来場者を数え、学術系の国際会議「F.R.O.G.(Future and Reality of Gaming)」も併催。ベンチャー企業への支援も手厚く、2014年には1億ユーロ(約145億円)の予算が組まれている。一方で国内市場の小ささから、海外市場の開拓に力を入れている。

スプロイングは2001年に設立された、オーストリアでも最古参のゲーム会社の一つで、社員数は90名ほど。コンソールゲームで10年以上の開発経験があり、5年前からはF2P(基本プレイ無料のアイテム課金ゲーム)開発にも乗り出した。空港建設ブラウザゲーム「SKYRAMA」(配信:BIGPOINT)は全世界で1000万人の登録ユーザーを記録。ゲームエンジンやサーバエンジンを自社開発するなど、高い技術力も特徴だ。

一方でミプミゲームは「グランド・セフト・オート」シリーズを手がけたロックスターゲームズの社員が独立し、5年前に設立したゲームスタジオ。社員数は25名で、ニンテンドーDS、PS3、Xbox 360から、スマホ向けゲームまで様々なジャンルのゲームを開発している。スマホ向けの都市育成シミュレーション「Anno:Build an Empire」(配信:UBIソフト) では、ドイツ・オーストリア・スイスのアプリマーケットでランキング1位にも輝いた実績を持つ。

ペイセイフカードは全世界39カ国でオンライン決済用のプリペイドカードを発行するリーディングカンパニー。ユーザーはコンビニなどで16桁の暗証番号が印刷されたカードを購入し、ブラウザ上で入力して課金・決済を行う。さ様々なな用途で使用されており、ゲームセクターでは70%が25歳以下で、そのうち男性の利用者が90%。40番目の発行国として、日本でもサービスインが予定されている。

オーストリア駐日大使館がゲーム分野でこうした記者会見を行うのは今回が初めてで、質疑応答では「日本と欧州の文化的な違いを学んで、ローカライゼーションに活かしたい」「韓国や中国企業とは協業してきたが、日本は初めてなので、いろいろと勉強したい」などのコメントが並んだ。滞在中は日本のゲーム会社や業界団体にも視察を行うという。

オーストリア以外にも、今秋にはアイルランド、スウェーデン、カナダなど、大使館主催のイベントが続いた。こうした背景には日本のアプリ市場が今年、アメリカを抜いて世界最大にまで成長したことがある。「クラッシュ・オブ・クラン」など海外発のゲームアプリが日本でもブレイクする中、海外アプリの今後に期待したい。

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