iPhoneのタッチスクリーンやキネクトのモーションセンサーなど、ユーザーインターフェースに関する技術は日進月歩を続けているが、それだけで誰もが使いやすいアプリケーションができるわけではない。そのために必要な概念がUX(ユーザーエクスペリエンス)だ。
本書『UXデザイン入門 ソフトウェア&サービスのユーザーエクスペリエンスを実現するプロセスと手法』(日経BP社、2012年)は、このUXデザインについて、基本的な考え方から実践プロセスまで、初心者向けにわかりやすく解説した、優れた入門書となっている。
UXとは、ある製品やサービスを利用したり、消費したりしたときに得られる体験の総体のことだ。そしてUXデザインとは、こうした体験をもたらすために必要なデザイン手法だと整理できる。
内容はUXデザイン概要から始まって、デザイン調査、ユーザーモデリング、ストーリーボード、スケッチとプロトタイプ、ユーザビリティテスト、ワークショップと、実際のUXデザインプロセスに沿って構成されている。eコマースサイトでのデジカメ購入を例に解説されており、UXデザインを追体験するような感覚で読み進められる。
特にゲーム業界においても、ゲーミフィケーションのデザイン時に、非常に参考になるだろう。ゲーミフィケーションとはゲームデザインのノウハウなどを実領域に応用する取り組みのことで、中でもウェブサービスを用いた事例が急増している。
ゲーミフィケーションではゴールとユーザーを最初に定義し、その間を適切なゲームメカニクスでつなぐことが重要だが、これはUXデザインにおけるデザイン調査やユーザーモデリング、ストーリーボードなどと符合する。これ以外にも意外な共通点に驚くのではないか。
また、純粋なゲーム制作においても、従来みられたスクラッチ&ビルドの手法が、開発コスト増大に伴い限界に来ている。UXデザイン的な考え方は、ますます重要になると思われる。
『UXデザイン入門 ソフトウェア&サービスのユーザーエクスペリエンスを実現するプロセスと手法』
著:川西裕幸、栗山進、潮田浩
出版社:日経BP社